真鶴お林菌類相調査、南郷山菌類相比較調査のまとめ・折原学芸員の報告
- 2016/05/08
- 12:33

・お林の調査により得られた菌類全体の種数に占める、マツの(外生)菌根菌の割合は、南郷山でのマツ菌根菌の割合と比較すると低かった。
・しかし、お林におけるマツの菌根の感染率は、南郷山におけるマツ菌根の感染率と比べて低い値とは言えなかった。そのため、お林にもマツの菌根菌自体は存在していると考えられる。
・菌類は生態系では分解者の役割を担っている。菌類の生態に関する研究は十分に進んでいないが、地球の生態系の物質循環においてはすべての生き物が重要な存在であり、菌類についてもきちんと研究していく必要がある。
貝サポ子ども探検隊「きのこ調査」経緯とサポートいただいた方々への謝辞
きのこ調査の発端は『真鶴半島子ども探検隊』での活動で、平成25年に広報真鶴の企画として実施されました。
当時箱根ジオパーク認定に向けた活動が推進されており、地域の自然史について町民の皆さんに知ってもらいジオパークへの関心を高めるために、まず地元の子どもたちが学べる場を設けてその学習成果を町の広報紙で発信することを計画したものです。
公募で集まった7名の子どもたちが、神奈川県立生命の星・地球博物館の8分野(地学・菌類・昆虫・貝類甲殻類・鳥類・植物・哺乳類・魚類)の各学芸員にインタビューし、標本や資料を見学し、そのまとめを真鶴町立遠藤貝類博物館の山本学芸員が監修、広報真鶴平成26年1月号に「真鶴半島物語」として掲載されました。
子どもたちは予想以上に自然科学の学習に意欲を示し、この「学び」を継続、発展させたいとの願いから、同年、子ども探検隊を貝博サポーターズの教育普及活動として位置づけ、子どもたちの興味関心が高かった菌類に着目し、生命の星・地球博物館の折原貴道学芸員に指導をお願いして「真鶴半島きのこ調査」が始まりました。
当初は、真鶴お林菌類相調査を一年間行う予定でしたが、思いのほか松に共生するきのこ(菌根菌)の種類と数が少なく、マツの健康状態と関係があるのでは?という疑問点がみつかったため、さらに一年間をかけて、比較的環境条件の近い南郷山の松林での比較調査が実施されることになりました。
二年間という時間をかけ、それぞれ季節ごと4回のきのこ採集、標本作成、土壌状態確認のための菌根調査、関連して地図の読み方講習会と、本当にたくさんの充実した活動となりました。
折原学芸員はもとより、菌類ボランティア、保護者の皆さんのご協力とお力添え、そして何より子ども探検隊のメンバーがあってこそ最後まで実施できたことと、スタッフ一同感謝の気持ちでいっぱいです。
二年間ありがとうございました。
(刀称由美子・中村恭子)